予防歯科とクリーニングの違いは?目的や費用、頻度を比較

予防歯科は、定期ケアを通じて虫歯や歯周病を防ごうという考え方です。海外では一般的な考え方で、近年は日本でも予防歯科の意識が広まりつつあります。予防歯科と聞いて「歯をきれいにクリーニングすること」をイメージする方もいますが、厳密にいうと予防歯科とクリーニングでは目的や効果が異なります。

本記事では、予防歯科とクリーニングの違いをわかりやすく解説します。歯石除去やPMTC、エアフローとの違いもまとめているので、予防歯科に関心をお持ちの方はぜひ最後までお読みください。

予防歯科とは

大きな白い歯の模型の噛み合わせ面に、歯科用の探針の先端を当てている様子

予防歯科とは、虫歯や歯周病にならないよう予防することを目的とした歯科医療の考え方です。従来の歯科医療は、痛みやトラブルが起きてから歯科医院で治療を受けるという流れが一般的でした。虫歯になると歯を削る・神経を取る・抜歯するといった処置が必要になりますが、どの処置も回数が増えるほど歯の寿命を縮めてしまいます。

歯科治療で削った歯は、詰め物や被せ物をしたとしても二度と同じ状態に戻りません。歯を失うことは、口腔内だけでなく体の健康にも影響を与えるため、定期的な管理によってリスクをコントロールするのが予防歯科の目的です。

近年は、歯周病が糖尿病や心疾患などの全身疾患と関連することも指摘されており、全身疾患の悪化予防という観点からも予防歯科の重要性が高まっています。

予防歯科の効果

予防歯科には、単に見た目をきれいにするだけでなく、口腔内の健康を長期的に維持する効果があります。

▼虫歯・歯周病のリスクを下げる
予防歯科では、セルフケアでは落としきれない歯垢や歯石、バイオフィルムを定期的に除去します。細菌が増殖しにくい口腔内環境を保てるので、虫歯や歯周病予防の効果が期待できます。
▼早期発見・早期治療につながる
定期的に検査を受けることで、初期の段階で虫歯や歯周病を発見できます。早期発見は治療負担や通院回数の軽減につながります。
▼将来的な医療費の負担軽減が期待できる
重度の虫歯や歯周病の治療には時間も費用もかかります。予防歯科を継続することで重症化を防げるため、結果として将来的な医療費の削減に役立ちます。
▼口腔内環境の安定・維持
歯ぐきの炎症や口臭予防など、口腔全体の健康維持にも効果が期待できます。口腔内環境は全身の健康にも関与することから、予防歯科には健康寿命を延ばす効果も期待されています。
▼全身疾患の間接的な予防効果

近年、歯周病などの口腔内の炎症が全身の健康に影響を与えることが明らかになってきました。たとえば、歯周病は糖尿病や心血管疾患の悪化と関連があるとされています。

また、歯周病菌が血流に入り込むことで、心臓の内膜に感染を起こす感染性心内膜炎のリスクも指摘されています。抗がん剤治療・免疫抑制剤を使用している患者様もハイリスクです。免疫力の低下によって、口腔内の細菌が原因となる感染症のリスクが高まる可能性があります。

さらに、歯周病は早産や低体重児出産との関連も指摘されており、妊娠中の口腔ケアはより一層の注意が必要です。このように、予防歯科によって口腔内の炎症をコントロールすることは、全身疾患の間接的な予防や悪化防止にもつながる可能性があります。

予防歯科で行うこと

予防歯科は、単一の処置ではなく複数のケアを組み合わせて行われます。

▼口腔内検査
虫歯の有無や歯ぐきの状態、歯周ポケットの深さなどを確認します。必要に応じてレントゲン撮影を行い、目に見えないトラブルもチェックします。
▼歯石除去
歯ブラシでは除去できない歯石を専用器具で取り除きます。歯周病予防の基本となる処置です。
▼PMTC
専用器具や研磨剤を用いて歯面を清掃し、バイオフィルムを除去します。歯の表面を滑らかにすることで、汚れが再付着するのを防ぐ効果も期待できます。
▼フッ素塗布
歯質を強化し、虫歯になりにくい状態を作るために行われます。子どもだけでなく、大人にも有効な予防方法です。
▼ブラッシング指導
磨き残しの癖や歯並びに合わせたブラッシング方法を指導します。セルフケアの質を高めることも、予防歯科が目指すポイントです。
▼リスク評価にもとづく個別管理
虫歯や歯周病のリスクを評価し、通院頻度やケア内容を調整するための個別管理を行います。虫歯リスクが高い方は短い間隔でメンテナンスを行うなど、オーダーメイドの予防プランが組まれることもあります。

クリーニングとは

大きく口を開けた状態のピンクの歯茎と白い歯の顎模型。左側にはデンタルミラーなどの器具が並んでいる

クリーニングとは、歯磨きだけでは落としきれない汚れや歯石、着色などを専用の器具や機械を使って取り除く処置のことです。

毎日しっかり歯を磨いていても、歯と歯の間や歯ぐきの境目には汚れが残りやすく、時間の経過とともに歯石やバイオフィルムへと変化していきます。歯科医院で行うクリーニングは、セルフケアでは除去できない汚れを除去することを指します。

実は、クリーニングという言葉には全国で統一されている明確な基準がありません。汚れを取り除くという点は共通しているものの、歯石除去のみを行う歯科医院もあれば、PMTCやエアフローまで含めた総合的な処置をクリーニングと呼ぶ場合もあります。

クリーニングの効果

クリーニングに期待できる効果には次のものがあります。

▼着色除去
コーヒー・紅茶・ワイン・タバコなどによる外因性の着色を取り除き、歯本来の色に近づけます。歯を白くするホワイトニングとは異なり、汚れを落として明るく見せるイメージです。
▼歯の表面の滑沢化
歯の表面をなめらかに整えることで、汚れや細菌の再付着を防ぎます。
▼口臭の軽減
細菌や歯垢を除去することで、口臭の改善につながることがあります。特に、歯周病由来の口臭予防に有効です。
▼軽度の歯肉炎の改善
歯ぐき周辺のプラークや歯石を除去すると、初期の歯肉炎が改善することがあります。

クリーニングで行うこと

クリーニングは、以下の処置を組み合わせて行われます。(具体的な処置の内容は歯科医院によって異なります)

▼歯石除去
超音波スケーラーなどを用いて、歯に付着した歯石を取り除く処置です。歯石は細菌の温床となるため、歯周病予防の基本となります。
▼研磨
専用のブラシやペーストを使い、歯面を磨いてなめらかに整えます。細かな着色や汚れを落とした後の仕上げとして行われます。
▼エアフロー
微粒子パウダーをジェット噴射し、歯の表面の着色やバイオフィルムを除去する処置です。タバコやコーヒーによる着色が気になる方におすすめです。
▼PMTC
専用機器を使って歯の表面や歯間を丁寧に清掃し、バイオフィルムを除去します。

予防歯科とクリーニングの違い

歯科医院のユニットにセットされた、先端にバー(切削器具)が取り付けられた歯科用ハンドピースやシリンジのクローズアップ

予防歯科は虫歯や歯周病を防ぐという「考え方」で、クリーニングは歯をきれいにする「処置」を指します。クリーニングは予防歯科の中で行われる処置の一つだと考えるとわかりやすいかもしれません。ここからは、予防歯科とクリーニングを目的・費用・頻度・時間の4つの軸で比較していきます。

目的の違い

予防歯科では、虫歯や歯周病を未然に防ぎ、口腔内の健康を長期的に維持することを目指します。定期的な検査やリスク評価を行いながら、将来的なトラブルを防ぐことが目的です。

対して、クリーニングは歯石や着色などを取り除き、歯をきれいにするための処置です。

予防歯科は長期的な疾病予防や管理を含む包括的な概念であり、その中の処置の一つにクリーニングがあるという考え方をします。

費用の違い

予防歯科は自費診療として扱われることが多く、費用は1回あたり5,000〜15,000円程度が目安です。歯周病管理や治療が必要な場合は保険診療になることがあります。

クリーニングも、治療目的で行われる場合は保険診療、予防や審美目的であれば自費診療として扱われます。保険診療で行うクリーニング(スケーリング)の場合、3割負担で2,000〜4,000円前後が目安です。

頻度の違い

予防歯科では、口腔内環境に応じて3〜6ヶ月ごとの定期管理が推奨されます。たとえば、歯周病リスクが高い方は短い間隔で通院し、磨き残しが少なく、口腔内環境が安定している方は長めの間隔に調整するといった個別管理が行われます。

クリーニングも、基本的な通院の目安は同じです。ただ、予防歯科のような計画的な管理は行わないため、歯石や着色が気になったタイミングで受診するという方が多いです。

時間の違い

予防歯科では、検査・カウンセリング・クリーニング・ブラッシング指導など包括的な管理を行うため、1回あたり30〜60分程度かかることが一般的です。一方、クリーニングは歯石除去や研磨などの処置に限定されるため、所要時間は15〜30分程度と予防歯科より短く済むことが多いです。エアフローやPMTCなどを追加する場合は、その分時間が長くかかります。

歯石除去・PMTC・エアフローの違い

白い手袋をはめたスタッフが顎模型を手に持ち、水色の歯ブラシを使って歯磨きの指導やブラッシングの実演をしている様子

予防歯科やクリーニングは、歯石除去やPMTC、エアフローと比較・混同されることがあります。これらはすべて口腔内を清潔に保つための処置ですが、目的や方法が異なります。

それぞれの違いをチェックしてみましょう。

歯石除去とは

歯石除去とは、歯に付着した歯石を専用の器具で取り除く処置のことです。歯石は歯垢(プラーク)が唾液に含まれるリン酸やカルシウムと結合して硬くなったもので、歯磨きで落とすことができません。

歯石は細菌の温床となるため、そのまま放置すると歯肉炎や歯周病の進行につながるリスクがあります。セルフケアでは除去できない汚れを、超音波スケーラーや手用スケーラーを使って落とす処置が歯石除去です。

歯石除去は、歯周病の治療・予防を目的とした医療行為として位置づけられており、症状や診断に応じて保険適用になることが多いです。

PMTCとは

PMTCとは「Professional Mechanical Tooth Cleaning」の略で、歯科医師や歯科衛生士などの専門家が専用機器を使って行う機械的歯面清掃を指します。

歯ブラシでは除去しきれない細菌の膜(バイオフィルム)は虫歯や歯周病の原因となるため、PMTCで定期的に除去することで口腔内環境の安定を目指します。PMTCには、専用ブラシやラバーカップによる清掃・歯間部のクリーニング・歯の表面の研磨・フッ素塗布などの処置が組み込まれるのが一般的です。

予防目的やメンテナンスとして実施されることが多く、自費診療となるケースが多いです。

エアフローとは

エアフローとは、水と空気、そして微粒子パウダーをジェット噴射することで、歯の表面に付着した汚れや着色を除去するクリーニング方法です。コーヒーや紅茶、赤ワイン、タバコのヤニといった外因性の着色に効果が期待できます。

歯の表面を削るわけではないため、歯への負担が少ないクリーニング方法として注目されています。また、矯正装置の周囲や歯と歯のすき間など、ブラシが届きにくい部分にも対応できることがメリットです。審美目的の要素が強いため、基本的には自費診療として扱われることが多い処置です。

一般歯科と予防歯科の違い

水色の背景に並ぶ5つの可愛い歯のキャラクター。中央の1つだけが虫歯で泣き顔になっており、上には歯ブラシやデンタルフロス、ミラーが置かれている

一般歯科では、虫歯や歯周病などの症状が現れてから治療を行うという考え方をします。痛みを和らげる・歯を修復する・神経をとるなど、現在起きているトラブルを解決することが主な目的です。

一方、予防歯科は症状が出る前から口腔内を定期的に管理し、トラブルを未然に防ぐことを重視します。検査やクリーニング、生活習慣の見直しなどを通して、虫歯や歯周病のリスクをコントロールします。

一般歯科は「問題が起きてから治療する」、予防歯科は「問題が起きないように管理する」という考え方が決定的な違いです。

予防歯科とクリーニングは同時にできる?

ステンレス製のトレーの上にきれいに並べられた、歯科用ミラーや探針などの診察用器具

多くの歯科医院では、予防歯科の工程に歯石除去やPMTCといったクリーニングの処置も含めています。よって、予防歯科を受ければクリーニングもしてもらえると考えてよいでしょう。

一つだけ注意したいのが、すべての歯科医院が予防歯科に力を入れているとは限らないという点です。クリーニングのみ対応している歯科医院では、予防歯科の定期管理やリスク評価は受けられないという意味です。

単発のクリーニングではなく、継続的な管理を希望する場合は、予防歯科としてのメンテナンスを受けられるかを確認することが大切です。

予防歯科を受けたい!歯科医院選びのポイント

白い背景に置かれた開いた状態の歯列・顎模型と、手前に並べられた4色のカラフルな透明ハンドルの歯ブラシ

予防歯科は一度受けて終わりではなく、定期的に通うことが前提になります。予防歯科の実績や費用、通いやすさなどを総合的に判断したうえで歯科医院を選ぶことが重要です。

歯科医院選びの際は、予防歯科や個別のリスク管理に力を入れているかを確認しましょう。検査結果やリスクについてわかりやすく説明してくれる医院は、長く通いやすい傾向があります。

定期的に通院する以上は、予防歯科の内容や料金を明確に提示しているかもチェックすべきポイントです。また、無理なく続けられるよう、自宅や職場から通いやすい場所にあることも歯科医院探しの条件になります。

まとめ

白く整った綺麗な歯並びで微笑む女性の口元と、顎や頬に優しく添えられた手のクローズアップ

予防歯科は「虫歯や歯周病を防ぐための長期的な管理」、クリーニングは「汚れを取り除くための処置」という違いがあります。

日本では虫歯になってから治療するという考えが一般的でしたが、近年は予防歯科の重要性が注目され、定期的に通院しようと考える方が増えています。定期的なケアを続けることは、健康な歯を長く守る一番の近道です。

こじまデンタルクリニックでは、お子様から高齢の方まで安心して通える歯科医院を目指しています。予防歯科にも力を入れているので、歯と体の健康寿命を延ばしたい方はお気軽にお問い合わせください。

監修者情報

こじまデンタルクリニック 院長

小島 好博

口腔外科出身の経験を活かし、乳児からご高齢の方まで幅広い世代のお口の健康をサポートしています。歯科用CT・マイクロスコープなどの先端設備を導入し、患者様一人ひとりのお話を丁寧にお聞きしたうえで、最適な治療計画をご提案することを大切にしています。

経歴

  • 2010年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)臨床研修歯科医師
  • 2012年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 研究生
  • 2012年:成田記念病院歯科口腔外科 常勤勤務
  • 2014年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 客員助教
  • 2016年:成田記念病院歯科口腔外科 医長
  • 2018年:こじまデンタルクリニック 開業
  • 2022年:医療法人つむぐ設立

資格

  • ・日本口腔外科学会 認定医
  • ・日本歯科麻酔学会 認定医

所属学会

  • ・日本口腔科学会
  • ・日本有病者歯科医療学会
  • ・日本睡眠歯科学会
  • ・日本口腔外科学会
  • ・日本歯科麻酔学会
  • ・障害者歯科学会

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