歯と口の相談室
Column
歯科医師でも勤務医の年収は低い?平均と収入を上げる方法を解説
令和4年賃金構造基本統計調査によると、歯科医師全体の平均年収は約810万円です。ただしこの数値には開業医が含まれており、常勤の勤務歯科医師に限ると690〜700万円台が現実的な目安になります。「歯科医師は高収入」というイメージと勤務医の実態にはギャップがあるのが現状です。
とはいえ、勤務医の年収は一律ではありません。同じ経験年数でも、担当する診療の幅、職場の給与設計、評価の仕組みによって100万円以上の差が開くことがあります。「勤務医だから年収が低い」のではなく、年収を決めている構造を理解した上で環境を選ぶことが、収入を上げるための第一歩です。
歯科医師(勤務医)の平均年収

「歯科医師全体で810万円」という統計をそのまま受け取ると、勤務医の実態とはかけ離れた数字になります。開業医を除いた勤務医の年収を、年齢帯と勤務先のタイプに分けて見ていきます。
年齢・経験年数別の年収
令和4年賃金構造基本統計調査によると、歯科医師の給与は年齢・経験年数とともに増加する傾向がありますが、注意すべきは年功序列で上がっているわけではないという点です。
【令和4年賃金構造基本統計調査をもとに算出した金額】
| 年齢 | 平均年収 |
|---|---|
| 25〜29歳 | 464万3,300円 |
| 30〜34歳 | 666万6,700円 |
| 35〜39歳 | 996万3,600円 |
| 40〜44歳 | 1,031万8,300円 |
| 45〜49歳 | 1,254万6,400円 |
| 50〜54歳 | 1,085万300円 |
| 55〜59歳 | 1,209万7,900円 |
| 60〜64歳 | 1,047万4,800円 |
| 65〜69歳 | ー |
| 70歳〜 | 585万1,600円 |
歯科医師の収入が伸びる局面は、「年齢を重ねたから」ではなく「担当できる診療の難易度と幅が広がったから」であることがほとんどです。
研修修了直後は基本的な外来診療が中心ですが、口腔外科やインプラント、訪問診療など対応できる領域が増えるにつれて、医院への収益貢献度が上がり、それが給与に反映される構造になっています。つまり、同じ30代でも「保険の一般外来のみを担当している方」と「口腔外科や自費診療を含む幅広い診療を任されている方」では、年収に明確な差が出ます。年収は年齢ではなく、臨床力の幅と深さに連動する職種です。
勤務先別の年収
全体平均810万円と勤務医の実感が噛み合わない最大の理由は、歯科医師の約56%が開業医であることにあります。50〜60代では約70〜80%が開業しており、開業医(院長)の平均年収は1,200〜1,400万円台(賞与込み)です。この層が全体平均を大きく引き上げているため、勤務医が「810万円」を自分の基準にすると実態と乖離します。勤務医の目安は690〜700万円台ですが、ここからさらに勤務先のタイプで差が開きます。
保険診療中心の医院では、診療報酬が一定のため給与は安定しやすい一方、大幅な収入増は見込みにくい傾向があります。インプラントや口腔外科など自費診療を含む医院では、担当した診療が医院の収益に直結するため、インセンティブや歩合給が基本給に上乗せされるケースがあります。医療法人で分院長や副院長といった役職に就けば、基本給自体が上がるのが一般的です。
もう一つ見落とされやすいのが、給与の「見え方」と「中身」のギャップです。基本給が高く見えても、残業代込みの固定給だった場合は時給換算で実態が変わります。逆に基本給は控えめでも、各種手当・インセンティブ・外部研修費の医院負担を含めると総合的な待遇が上回るケースもあります。求人票の数字だけで比較すると判断を誤りやすいポイントです。
歯科医師(勤務医)の年収に差が出やすいポイント

勤務医同士でも年収に差が開くのは、「何ができるか」「どこで働いているか」「どう評価されているか」の3つが要因です。
経験・スキル・専門性
担当できる診療領域が広がると、医院の収益への貢献度が上がるため給与に反映されやすくなります。口腔外科・インプラント・歯周治療などは1件あたりの診療報酬が高く、自費診療に繋がるケースも多いため、こうした領域を担える歯科医師の市場価値は高い傾向にあります。
学会の認定医・専門医資格は、転職時の給与交渉で「自分のスキルを客観的に示す根拠」として機能します。ただし資格を取るだけでは収入は上がりません。その資格に見合った症例を実際に担当し、医院の収益に貢献できている実態が伴って初めて、給与交渉の材料になります。「資格を取る」ことと「資格を活かせる環境にいる」ことは別の問題で、後者がなければ収入への反映は限定的です。
診療内容・自費診療の有無
保険診療のみの医院と、自費診療を扱う医院では、給与設計の前提が異なります。自費診療の比率が高い医院では、担当した治療が直接医院の売上に反映されるため、インセンティブ制度を採用しているケースがあります。
ただし、自費診療といっても審美やホワイトニングだけが選択肢ではありません。口腔外科やインプラント、有病者への専門的な対応など、保険の枠を超えた診療領域も自費診療の一部です。
今の自分のスキルで対応できる自費診療の幅が限られている場合、まずはその拡充に取り組む方が、年収交渉の土台が固まります。どの領域のスキルを伸ばすかを考えるとき、「単価が高い診療」だけでなく「自分の関心と職場の診療体制が噛み合う領域」を軸にする方が、長期的にはスキルも収入も伸びやすくなります。
勤務地・人員体制の影響
都市部のクリニックは給与水準が高い傾向がある一方、地方の公立病院や医療法人では住宅手当・家族手当・交通費など各種手当が充実しているケースもあります。額面の給与だけでなく、生活コストとのバランスで実質的な手取り感覚が変わる点は見落とされやすいポイントです。
もう一つ、給与の納得感を左右するのが評価制度の透明性です。昇格要件や給与テーブルが明示されていない職場では、「何をすれば収入が上がるか」がわからないまま時間が過ぎます。逆に、昇格の条件と給与の対応関係を本人が確認できる仕組みがある職場なら、目標設定と行動計画を自分で組み立てられます。求人票には載りにくい情報ですが、面接や見学の際に「評価制度はどうなっていますか」と聞いてみる価値はあります。
歯科医師が勤務医として年収を上げる方法

年収を上げる手段は「転職」だけではありません。今の環境でできること、働き方の組み合わせで変えられることも含めて、現実的な選択肢を整理します。
勤務先を変える
現在の職場での評価が実力に見合っていないと感じる場合、転職によって適正な報酬に再評価されることがあります。ただし、「年収が高い求人を探す」だけでは本質的な解決にならないケースがあります。
転職で年収を上げたいなら、「なぜ今の職場で年収が上がらないのか」を先に整理することが重要です。原因が「診療領域が限られていて貢献度が見えにくい」なら、幅広い診療を経験できる職場への移動が有効です。「評価制度が不透明で成果が反映されない」なら、給与テーブルが明示されている職場を選ぶことで解決できます。「そもそもスキルが足りない」なら、年収よりも学べる環境を優先した方が、中長期で収入の天井が上がります。
転職の目的を「年収を上げる」ではなく「年収が上がる構造を持つ環境に移る」と捉え直すことで、選択肢の質が変わります。
診療領域や役割を広げる
今の職場にいながら年収を上げるには、担当できる診療領域を拡大するのが最も現実的な方法です。口腔外科・インプラント・歯周治療など、専門性が収益に直結する領域のスキルを習得すると、医院への貢献度が可視化されやすくなり、給与交渉の根拠になります。
重要なのは、スキルを伸ばす意思を職場に伝えることです。「口腔外科の症例をもっと担当したい」「認定医の取得に向けて研修に参加したい」と具体的に希望を出す方が、職場側も育成計画や評価への反映を検討しやすくなります。意思を示さなければ、今のポジションに満足していると見なされるのが自然です。
副院長や診療統括、新人指導といった役割を引き受けることで基本給が上がるケースもあります。こうしたポジションは「空きを待つ」ものではなく、日常の働きぶりの中で院長から適性を判断されていることが多いため、診療以外の場面でもチームへの貢献を意識しておくことが、結果的にキャリアアップに繋がります。
働き方を見直す
常勤に加えて、週1〜2回の非常勤として別の医院で専門外来を担当することで、実質的な収入を増やす方法もあります。口腔外科やインプラントなど専門性の高い非常勤は時給単価が高いケースがあります。ただし、体力と時間、本業への影響を考慮した上で、無理なく続けられる範囲で取り組むことが前提です。
長期的には、開業を視野に入れることが収入の上限を大きく引き上げる選択肢になります。開業には初期投資と経営リスクが伴いますが、勤務医時代にどれだけ幅広い症例を経験し、スタッフマネジメントや患者様対応の力を磨いてきたかが、開業後の収益を大きく左右します。「いずれ開業したい」と考えているなら、今の環境で得られる経験の幅を意識して日々の臨床にあたることが、最も確実な準備です。
まとめ

常勤勤務歯科医師の年収は690〜700万円台が目安ですが、専門性・診療内容・職場の評価制度によって変動幅は大きいです。年収を上げるための現実的な選択肢は「勤務先の変更」「診療領域の拡大」「役職・役割の引き受け」「非常勤の追加」の4つで、長期的には開業も視野に入ります。まず「今の職場で年収が上がらない原因は何か」を構造的に整理することが、次の行動を決める土台です。
こじまデンタルクリニックは、名古屋市緑区で外来・訪問・口腔外科・摂食嚥下をワンストップで提供する歯科医院です。院長は藤田医科大学口腔外科出身の日本口腔外科学会認定医・日本歯科麻酔学会認定医で、藤田医科大学准教授の口腔外科専門医も週1回診療に参加しています。診療領域が広い分、勤務医が経験を積める症例の幅も広く、スキルの拡大が収入に反映されやすい環境です。評価制度は昇格要件と給与テーブルを本人が確認できる透明な仕組みで、外部セミナー費用の支援も行っています。
患者様の健康な人生を支える「チーム医療」に、あなたの誠実さと向上心を活かしませんか。
監修者情報
こじまデンタルクリニック 院長
小島 好博
口腔外科出身の経験を活かし、乳児からご高齢の方まで幅広い世代のお口の健康をサポートしています。歯科用CT・マイクロスコープなどの先端設備を導入し、患者様一人ひとりのお話を丁寧にお聞きしたうえで、最適な治療計画をご提案することを大切にしています。
経歴
- 2010年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)臨床研修歯科医師
- 2012年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 研究生
- 2012年:成田記念病院歯科口腔外科 常勤勤務
- 2014年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 客員助教
- 2016年:成田記念病院歯科口腔外科 医長
- 2018年:こじまデンタルクリニック 開業
- 2022年:医療法人つむぐ設立
資格
- ・日本口腔外科学会 認定医
- ・日本歯科麻酔学会 認定医
所属学会
- ・日本口腔科学会
- ・日本有病者歯科医療学会
- ・日本睡眠歯科学会
- ・日本口腔外科学会
- ・日本歯科麻酔学会
- ・障害者歯科学会