インプラントの寿命は?交換・再手術の目安と費用について

インプラントの寿命は、口腔内の状態や噛み合わせ、セルフケア、定期メンテナンスの有無などの影響を受けます。適切に管理すれば20年以上使用できることもありますが、口腔内環境が悪化すると寿命は短くなってしまいます。

「インプラントは何年もつ?」「交換時期の目安が知りたい」といった疑問にお答えするため、本記事ではインプラントの寿命をわかりやすくまとめました。長持ちさせる方法も解説するので、インプラントを装着している方はぜひ最後までお読みください。

インプラントの寿命は10〜15年

水色の背景に置かれた、両隣の天然歯に挟まれて中央にインプラントが埋め込まれた歯の構造断面模型

インプラントの寿命は、一般的に10〜15年程度が目安とされています。これは、多くの臨床研究や予後調査で示されている中央値に近い数字です。

厚生労働省の委託事業で行われた調査によると、10~15年の累積生存率は上あごが約90%、下あごで約94%という報告があります。インプラントの寿命を左右する要素には次のものがあります。

  • 定期メンテナンス
  • インプラント周囲炎の発症
  • 噛み合わせ
  • 歯ぎしり・食いしばり
  • 喫煙習慣
  • 全身疾患(糖尿病など)

正しくケアすればより長期的に使用できるケースもあり、中には20年超の長期追跡の報告もあります。

参考:厚生労働省委託事業「歯科保健医療情報収集等事業」歯科インプラント治療のためのQ&A

ブリッジ・入れ歯の寿命

インプラントと比較されることの多いブリッジは寿命が7〜10年程度、入れ歯は5〜10年程度とされています。

寿命 主な劣化要因
インプラント 10〜15年程度(管理次第で20年以上) 周囲炎・過度な咬合力
ブリッジ 約7〜10年程度 支台歯の虫歯・歯周病
部分入れ歯 約5〜8年程度 金具の緩み・あご骨の変化
総入れ歯 約5〜10年程度 顎骨吸収・適合不良

ブリッジは両隣の歯(支台歯)を削って支える構造のため、支台歯が虫歯や歯周病になると寿命が短くなる傾向があります。

入れ歯については、あご骨が徐々に吸収されることで適合が悪くなり、作り替えが必要になるケースが多く見られます。

前歯と奥歯の寿命の違い

インプラントの寿命は埋入部位によっても差が出ることがあります。

咬合力が強く、日常的に大きな負担がかかる奥歯は、歯ぎしりや食いしばりの影響を受けやすい部位です。奥歯の方が前歯より咬合力が大きいため、力学的ストレスによるトラブルが起これば10年程度で追加処置が必要になることもあります。

対して、力の負担が比較的少ない前歯は奥歯よりも寿命が長く、10年以上もつことが多いとされています。ただし、審美性が重視される部位なので、定期的な見た目の調整が必要です。

オールオン4の寿命

オールオン4は、最少4本のインプラントで片あご全ての人工歯を支える治療法です。多数歯欠損や総入れ歯に抵抗がある方に選択されることが多いです。

オールオン4の寿命は、インプラント本体と上部構造で分けて考えます。

▼インプラント本体

  • 適切な管理で10〜20年以上使用可能
  • 周囲炎が起こらなければ長期安定しやすい

▼上部構造(人工歯)

  • 素材次第では10年前後で交換が必要になる
  • レジン製は摩耗しやすく、ジルコニア製は長持ちしやすい

インプラント本体よりも、上部構造の方が先に交換時期を迎えるケースが多いのが特徴です。

インプラントが寿命を迎えるサイン

人工歯(クラウン)が手前に取り外され、金属製のインプラント体とアバットメントが露出した状態の歯の断面模型

インプラントの寿命は、年数ではなくインプラントの状態によって判断します。寿命と判断する症状には次のものがあります。

  • インプラントがぐらつく・脱落する
  • インプラント周囲の骨が減っている
  • 強い炎症や感染が起きている
  • 人工歯が破損した
  • 噛み合わせの問題で機能維持が難しくなる

インプラントの周囲で炎症が起こると、骨吸収が進み、インプラントを支えられなくなります。インプラント周囲炎は初期症状が少ないため、気付いた時には骨が大きく溶けていて、除去や再手術が必要になることがあります。

人工歯の破損は上部構造の再製作のみで対応できることが多いですが、噛み合わせの異常や強い咬合力による影響は精査しなければなりません。

インプラントの寿命を縮めるNG習慣

歯痛や口元の違和感を訴えるように、人差し指で自分の右側の頬に触れている女性の口元のアップ

以下の生活習慣は、インプラントの寿命を縮めてしまうおそれがあります。

  • メンテナンスをしない
  • 喫煙
  • 歯ぎしり・食いしばり

それぞれの理由を解説します。

メンテナンスをしない

インプラント治療後にメンテナンスを受けない状態が長く続くと、プラークや歯石が蓄積し、インプラント周囲炎のリスクを高めます。

インプラント周囲炎は初期には自覚症状が乏しく、気づいたときには骨吸収が進行していることもあります。歯科医院での定期チェックを継続することは、インプラントの寿命を長く保つことにつながります。

喫煙

タバコに含まれるニコチンには、血流を低下させ、歯ぐきや骨への酸素供給を妨げる作用があります。血行不良はインプラントと骨の結合を不安定にさせるだけでなく、炎症が起きた場合の治癒も遅れさせます。

これまでの研究で、喫煙者は非喫煙者に比べてインプラント成功率が低下する傾向が示されていることからも、喫煙が主要なリスク要因の一つであることは明確です。

参考:Smoking and Dental Implants: A Systematic Review and Meta-Analysis

歯ぎしり・食いしばり

無意識の歯ぎしりや食いしばりは、インプラントに持続的かつ強い力を与えます。インプラントへの大きな負担は、人工歯の破損やネジの緩み、周囲骨の吸収が進行するリスクを高めます。

歯ぎしりや食いしばりは就寝中に起こりやすいため、ナイトガードの使用や定期的な咬合調整によって負担をコントロールすることが重要です。

インプラントで再手術が必要となるケース

青いスクラブを着用した歯科医師が、診察台に横たわる男性患者の口内を器具を使って検診している様子

インプラントは成功率の高い治療法ですが、まれに再手術が必要になることがあります。再手術は口腔内の状態や全身状態の変化、長年の使用による影響などで起こりうるものです。

再手術が必要となるケースには次のものがあります。

  • インプラント周囲炎が進行した
  • インプラント体が脱落した
  • インプラントが骨と結合しなかった

それぞれのケースを詳しく解説します。

インプラント周囲炎が進行した

インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支えている骨が徐々に吸収されていきます。骨吸収が大きく進行してしまうと、インプラントを一度除去し、再埋入しなければなりません。

なお、初期の炎症であればクリーニングや外科的処置で再手術を回避できるケースもあるため、インプラント治療後は定期チェックを欠かさずに行ってください。

インプラント体が脱落した

インプラント体の脱落は、骨の支持が不足したり、強い咬合力が持続的にかかったりした場合に起こることがあります。

脱落後は炎症や感染の有無を確認し、必要に応じて骨の回復を待つ期間を設けます。その後、骨量を確認してから再度インプラント治療を行うことになるため、すぐに再埋入できるとは限りません。

インプラントが骨と結合しなかった

インプラントはあごの骨と結合するという過程を経て安定するのですが、不十分な初期固定や全身状態の影響により、うまく結合できないことがあります。(オッセオインテグレーション不全)

インプラントとあごの骨が結合しなければ、いったん除去して骨の回復を待ち、条件を整えたうえで再埋入を行います。

インプラントの交換費用

木目調のテーブルの上に置かれた「診療明細書」「医療費請求(領収)書」の文字が書かれた書類とボールペンの先端

インプラントの交換費用は、どの部分に問題が生じているかによって大きく異なります。

インプラント本体に問題がなく、人工歯のみを交換する場合は、比較的費用を抑えられます。使用する素材によっても変動しますが、費用は10万〜20万円程度が相場です。

インプラント体を除去して再埋入する場合は、外科手術を伴うため費用は大きくなります。再埋入の相場は30万〜50万円程度ですが、骨造成が必要な場合はさらに5万〜30万円程度の追加費用がかかることもあります。

歯科医院によっては、保証期間内であれば再治療の費用の一部または全額が免除される保証制度を利用することも可能です。多くの場合、この保証は定期メンテナンスを継続していることが条件となります。

インプラントを長持ちさせる方法

水色の背景に並べられた歯科インプラントの各パーツ(インプラント体、アバットメント、人工歯)とデンタルブリッジ

インプラントを長持ちさせるには、以下の方法が有効です。

  • 信頼度の高いメーカーを選ぶ
  • 定期メンテナンスをする
  • セルフケアを徹底する
  • 禁煙する

それぞれの方法を詳しく解説します。

信頼度の高いメーカーを選ぶ

世界には多数のインプラントメーカーがありますが、すべてが同じ品質を保っているわけではありません。メーカーを比較するうえで、長期的な臨床データやパーツ供給、保証制度などはしっかり確認しましょう。

信頼度の高いメーカーは10年以上の追跡データを有していたり、パーツの互換性や供給体制が整っていることが多いです。将来的に人工歯のみ交換が必要になった場合でも、部品が入手できることは重要なポイントです。

定期メンテナンスをする

インプラントを長持ちさせるうえで、最も重要なポイントが定期メンテナンスです。

歯科医院では、プラークや歯石除去などのクリーニング、骨の状態確認、噛み合わせの微調整などが行われます。インプラント周囲炎や噛み合わせの変化などの自覚しにくい症状は、定期検査でしっかりチェックしてもらうと安心です。

インプラント治療後は、3〜6ヶ月に1回の頻度で定期検査を受けることが推奨されています。

セルフケアを徹底する

インプラントと歯ぐきの境目にプラークが付着・蓄積すると、インプラント周囲炎のリスクが高まります。セルフケアは歯磨きだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスを使って丁寧に清掃することが大切です。上部構造の形状によっては清掃が難しい部分もあるため、インプラント専用ブラシを使うのもおすすめです。

禁煙する

喫煙はインプラントの成功率、および長期維持に明確な悪影響を及ぼすことが明らかにされています。血流低下によって骨との結合が不安定になり、炎症が進行しやすくなるためです。

禁煙はインプラントの寿命を延ばすだけでなく、歯周病や全身疾患のリスク軽減にもつながります。自力での禁煙が難しい場合は、医療機関の禁煙外来や内科でのサポートを検討することも一つの方法です。

まとめ

歯科医師がペンの先で歯のインプラント模型を指し示し、もう一人の手が人工歯のパーツを模型に載せようとしている様子

インプラントは10〜15年で寿命を迎えるといわれていますが、適切な管理を続ければ20年以上使用できるケースもあります。

寿命は口腔内環境や全身状態、セルフケアで大きく変わるので、定期メンテナンスをしながら快適な状態を維持することが大切です。

こじまデンタルクリニックでは、患者様の疑問や不安を解決しながらインプラント治療を進めていきます。「初めてなので不安」「長持ちさせたい」という方は、お気軽にご相談ください。

監修者情報

こじまデンタルクリニック 院長

小島 好博

口腔外科出身の経験を活かし、乳児からご高齢の方まで幅広い世代のお口の健康をサポートしています。歯科用CT・マイクロスコープなどの先端設備を導入し、患者様一人ひとりのお話を丁寧にお聞きしたうえで、最適な治療計画をご提案することを大切にしています。

経歴

  • 2010年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)臨床研修歯科医師
  • 2012年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 研究生
  • 2012年:成田記念病院歯科口腔外科 常勤勤務
  • 2014年:藤田保健衛生大学病院(現:藤田医科大学)歯科口腔外科 客員助教
  • 2016年:成田記念病院歯科口腔外科 医長
  • 2018年:こじまデンタルクリニック 開業
  • 2022年:医療法人つむぐ設立

資格

  • ・日本口腔外科学会 認定医
  • ・日本歯科麻酔学会 認定医

所属学会

  • ・日本口腔科学会
  • ・日本有病者歯科医療学会
  • ・日本睡眠歯科学会
  • ・日本口腔外科学会
  • ・日本歯科麻酔学会
  • ・障害者歯科学会

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