抜歯後に入れ歯にするかインプラントにするかを選択する場合、インプラントに興味はあっても「痛みや腫れがあるのでは?」と心配する人は多いです。
そのような痛みへの不安を解消して理解を深めることで初めて、口腔機能回復の選択肢の一つにインプラントを含めて検討することができるでしょう。
この記事では、インプラント治療における手術中や手法による痛みの違い、手術後受診が必要なケース、術後における痛みの軽減方法などを紹介します。
結論からいうと、実は心配するほどではありません。インプラントの痛みとの付き合い方として参考にしてください。
インプラントの手術中に痛みを感じることはほぼないといっていいでしょう。
インプラントの手術は一般的には通常の虫歯治療と同じ局所麻酔が使用されるため、覚醒したままの状態での手術になります。
麻酔は各個人で効き方に違いがありますが、痛みがある場合は麻酔を追加することですぐに対応可能です。
元々痛みに弱い自覚がある人は、リラックスした状態で手術を受けられる静脈内鎮静法という麻酔法も選択できます。また、表面麻酔で注射針の痛みも回避することが可能です。
手術中の痛みが不安な場合や麻酔の効きが悪い自覚のある人は、事前に相談し対処してもらうことで、痛みに対する不安を解消することができるでしょう。
手術の不安や恐怖でパニックになる患者さんは少なくありません。恐怖のために、麻酔が効きにくく感じられる人もいます。
痛みや緊張によるパニックは血圧の急上昇やショックを引き起こしたり、ほんの少しの痛みにも敏感になったりします。
こういったように恐怖心や不安が強い人や気持ちが万全ではない人は、静脈内鎮静法がおすすめです。
静脈内鎮静法は中枢神経の働きが鈍くなるため、意識がわずかにありながらもうたた寝をしているような、非常にリラックスした状態でインプラント手術を受けられます。
また、寝不足や疲れなどが影響している人は、トラブルが起こる可能性を否定できないため、思い切って別の日に予定をずらすことも大切です。
麻酔は安心を得るための処置として効果的であるため、じっくり相談して納得のいく方法を選びましょう。
インプラントの手術後は痛みが強かったり長く続いたりする場合がありますが、処方される抗生物質と痛み止めによってコントロールが可能な痛みであることがほとんどです。
インプラントを埋め込むには、顎骨にしっかりした量と厚みが必要ですが、足りない場合は強化するための手術を行います。
インプラント手術の手法は以下の4種類があります。
骨移植・歯茎移植・骨造成は骨に対する手術で、骨の手術とインプラント埋入を同時に行うか、骨の術後の経過を見てからインプラント埋入を行うかが状況によって変わります。
また、インプラントを埋め込む手法にも1回法と2回法とがあり、どの手法で手術するかによって痛みの強さや痛む場所にも違いがあります。
ここでは、インプラント手術の種類による手法や痛み・ピークの違いを紹介します。
歯茎には歯ブラシの刺激に耐え得る歯肉が必要で、硬い歯肉がないとインプラントが歯周炎から守られないという研究結果が出ているため、歯肉を移植するケースがあります。
歯を失った理由が歯周病の場合、歯茎(歯肉)も歯や顎の骨と同時に溶かされ失っているケースが多くあるため、上顎の裏側から歯肉になる部分を採取し移植します。
そのため、患部と採取部分の2か所が痛むことになります。
患部の痛みよりも採取部分の方が痛むといわれていますが、虫歯のようなズキズキとした痛みがあるわけではなく、治まるまでの期間も1週間程度です。
骨移植で使用する骨には人工骨と自家骨の2種類があり、自家骨を使用する場合は骨を採取した場所にも傷ができるため、歯茎移植同様に2か所が痛むことになります。
人工骨は骨や歯と同様の構成成分の粉末を、顎骨の足りない部分に埋め込んで骨の再生を促します。
自家骨の場合は患者さん本人の下顎から採取するケースが多いです。
手術中は麻酔のため痛くありませんが、術後には傷口を治そうと活動する反応のために10日間くらいは痛みや腫れが続きます。
歯茎移植同様、治療した患部よりも骨を採取した部位の方が痛みが強いといわれています。
骨造成手術は、顎骨の足りない部分の骨を再生する治療法で、以下の5種類があります。
サイナスリフトとソケットリフトはどちらも上顎にしか行えない手術です。
上述した骨移植は、GBR法と遊離骨移植術のことで、骨造成のうちの一つです。
骨造成は痛みや腫れが10日間ほど続き、比較的痛みが強いですが、骨移植同様抗生物質と痛み止めによって生活に支障がない程度に抑えられます。
無切開無痛手術は、インプラントを行う部分の骨量や厚みが十分にあり問題がない場合に、歯肉を切開せずに穴を開けてインプラントを埋入するという手術です。
術中・術後の腫れや痛み・出血がほとんどなく、かかる時間も大幅に短縮できます。
高血圧や糖尿病などの持病がある患者さんにもインプラントの提供が可能です。
術野が狭いため、充分な経験を積んだ医師の技術と判断が必要となる難しい手術であり、適応できる症例も限られます。
インプラントの埋入法には、1回法と2回法があります。文字通り、埋入のための切開が1回で済むか2回必要かの違いです。
1回法はインプラントを入れる部分周辺の組織に問題がなく、顎骨の量や厚みが充分な場合に行える手法で、インプラントの埋入が1回の切開で済みます。
2回法は、上述のようなインプラントを埋入するために顎骨の準備や歯肉の移植などが必要な場合に行われる手法で、幅広い症例に対応できます。
2回法ではインプラントの人工歯根部分を先に埋入して縫合し、3〜6ヶ月程様子を見てから2回目を行うため、切開が2回必要です。
症例に合わせて選択されますが、切開の回数が違うため、体が負うダメージや感染症にかかる確率などに違いがあります。
インプラントの手術後は、10日前後あたりに患部を確認して抜糸が行われますが、傷口に触れるため、痛みを感じることがあります。
ほとんどの場合は麻酔なしで行われるようなチクッとする程度ですが、痛みの感じ方は人それぞれのため、麻酔の希望があれば事前に歯科医師に相談してみましょう。
その後はインプラントと顎の骨結合を待つ定着期間に入ります。
定着期間は、特に炎症など問題が起こらなければ痛いと感じることはほぼありません。
なお傷口が完治するには1ヶ月程度かかるため、硬いものを噛む・傷に歯ブラシをあてるなど、痛みを増長するようなことは避けて過ごしましょう。
インプラントは虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎(歯周病菌によりインプラント周辺組織に炎症を起こしている状態)や噛み合わせの悪化などが起こると、術後数年経ってから痛みを感じる場合があります。
天然歯とインプラントでは、以下のように歯周病の進行の順に違いがあります。
インプラントには天然の歯のような免疫力はなく、以上のように歯槽骨までダイレクトに進行してしまうため、通常の歯周病より3倍も進行が早いと言われています。
インプラントにしたからといって痛い思いをしなくて済むようになるわけではないため、天然の歯同様、メンテナンスは大切です。
インプラント手術後の痛みを避けるためには、受診しなければいけないケースを把握しておくことが大切です。
インプラント手術後に以下のような症状が見られたら、手術を行った歯科医院を受診しましょう。
術後の痛みを我慢する必要はありません。気になること、分からないことなど、速やかに受診したり、問い合わせしたりして指示を仰ぎましょう。
痛み止めを服用しても痛みがしっかり引かない、歯科医院を受診したいけれど休診日、あるいは夜中の場合など、痛みに悩まされることもあるかもしれません。
インプラント手術後に痛みが止まないときに軽減する方法について紹介します。
歯が痛い時の基本として、入浴・運動・激しい運動など、血行がよくなるようなことは避けましょう。
炎症時の痛みは拍動に合わせて襲ってきます。血流が増えるタイミングで痛むためズキズキし、腫れは悪化します。
特に手術当日は安静に過ごし、術後1週間は入浴も控えましょう。
手術後や痛みが気になる間は、刺激の強いものは食べないようにしましょう。
まず手術直後から麻酔が切れるまでの口元の感覚が戻っていない間は、熱さや痛みも感じないため、やけどやケガにつながる可能性があります。
そのためできるだけ飲食は避け、どうしても必要な場合はゼリーやスープなど、あまり噛まずに食べられるものを選びましょう。
また、硬いものや粘着力のあるものは強い力がかかるため、熱いものや辛いものは刺激による痛みや腫れを避けるため、なるべく口にしないことをおすすめします。
抜糸が済んでから、少しずつ元の食生活に戻していきます。
喫煙や飲酒は、痛みが増したり治りが遅れるなど、術後の傷にいい影響がないため控えましょう。
喫煙は血管が収縮するため、必要な血液が届きにくくなり、治りが遅くなったり細菌感染のリスクが高まったりします。
また、インプラントでは致命的な、歯茎が痩せやすくなる弊害があります。
飲酒すると血流がよくなって痛みが生じやすくなるうえ、唾液の分泌量が減り口腔内の雑菌が増える原因になります。
そしてどちらも睡眠の質が落ちるため、免疫力が低下するデメリットもあります。
せめて抜糸が済むまでは、減らすか止めるかどちらかにしましょう。
歯磨きについては抜糸までは傷口に気をつけて歯ブラシを当てないようにし、強いうがいは避けるなど、刺激のあるケアは控えましょう。
術後のため気を使って口腔内を清潔に保つためしっかり行ってしまいがちですが、出血や痛みを引き起こして、治りも遅くなる可能性があります。
もし歯磨きをする場合は、柔らかい歯ブラシを使用し、歯磨き粉をつけずに磨くことをおすすめします。
うがい時も軽めにして、抜糸が済むまでは刺激を与えないケアを心がけましょう。
サイナスリフトを行った際は、気圧の変化で患部に痛みを引き起こす場合があるため、最低1ヶ月は飛行機に乗らないようにしましょう。
サイナスリフトは上顎洞にアプローチして骨の厚みを出す手術ですが、上顎洞は気圧のコントロールをする部分と考えられているため、飛行機に乗ると影響を受けて痛みます。
本来であれば骨造成における骨との結合が安定するには3ヶ月程度かかるため、可能であればその間は避けましょう。
インプラントを受ける際は、飛行機に乗る予定がないうえでスケジュールを調整することをおすすめします。
インプラントはその治療方法を聞くと痛いというイメージが浮かぶのは無理もないとは思いますが、治療自体は虫歯と同様に局所麻酔で行われます。
術後も痛み止めを使えば痛みをコントロールでき、支障なく日常生活を送ることが可能です。
まるで自分の歯のように噛むことができるインプラントを抜歯後の選択肢に考えたいと思っている人は、この記事を読んで相談するきっかけにして頂ければ幸いです。
名古屋市緑区のこじまデンタルクリニックでは、インプラント治療を提案・提供しています。
歯を失う原因として最も多い歯周病の治療相談も気軽にできるよう、24時間のWeb予約や電話予約を承っております。
インプラント治療が初めてという方でも、痛みの不安や疑問などを解決したうえで一緒に治療に進みましょう。
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